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一冊の書、一人の作家との出会いが
人間としての厚みと奥深さ、そして潤いをもたらす
宇都宮大学 教育学部 鈴木 啓子 教授
 教育学部『国語教育講座』で教鞭をとる鈴木啓子教授の専門は『日本近代文学』。鈴木先生が文学研究の道を志すきっかけとなったのは明治・大正・昭和戦前期の作家『泉鏡花』との出会いだそうです。
「泉鏡花を初めて読んだのは大学入学後でした。鏡花の小説の素材は子どもの昔話のような、一見すると他愛のないものが多いのですが、そんな作品群を面白く読み、感動している自分が不思議でなりませんでした。それが何故なのかを見極めたくて卒論で鏡花を取り上げ、それ以来『泉鏡花』が私の研究活動の核になっています」

 泉鏡花に限らず、日本近代文学史に名を連ねる作家たちの作品は、‘厚み’があるばかりでなく、読み手によって読み方が分かれる‘空白’がある、と鈴木先生は指摘します。
「近代文学の面白さは、その‘空白’を『議論すること』にあると思うのです。私が担当している二つのゼミでは、例えば芥川龍之介の一つの短編小説を取り上げ、その作品についてゼミ生全員で議論を闘わせる、という方法で進めています。自分はこう感じたけれど他の人は全く違った感想を持っている。あるいは自分が全く気づかなかったことを他の人から指摘されるとか・・・。そうした議論を通して作品の魅力を理解し、深く読み取る力を養っていきます」

 鈴木先生が指導するゼミで学んでいる学生は、将来国語の教師として教壇にたち、国語や文学を教えることを目指す学生がほとんどです。しかし、そうした専門職を目指す学生ばかりでなく、多くの学生、そしてこれから大学を目指している高校生の皆さんにも、文学作品に触れることの愉しさを知って欲しいと、鈴木先生は願っています。
「文学作品は『自分を写す鏡』なのです。一つの作品でも年齢を経て読み返すと感じることが変わります。また、時代の空気によっても印象は変わります。優れた作品を読むことで、新しい自分の内面が発見できる、そうした喜びを多くの人に味わって欲しいですね。たまたま手に取った作品、それが村上春樹でも、重松清でも、誰でもいいのです。その作品や作家に面白さを感じたら、次の作品へと読み進んでみましょう。それが『文学の愉しさ』の扉を開ける鍵になるのです」
 
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